6/12米朝会談中止の報に関するトランプ大統領の書簡を見る

外国人が読む前提のためかとても平易な文章ですね。それでいて外交文書だからか表面的に穏当そうでいて、ダブルミーニングで取れる部分も多いので、少し踏み込んで訳してみようかなと。
あ、一応、5-11歳の間英国在住だった帰国子女です。理系なので英文専門ではないですが、TOEIC最高点950点なのでそれなりに読めるつもりです。



定型文飛ばします。
引用の中の訳の方は直訳的に書いてます。この段階で意約しすぎると、表面的な意味と裏の意味とを併記するのが面倒になるので。

我々は、シンガポールで6/12に開催が予定されている双方にとって長らく望まれてきた会議に関して、ここ最近の協議や相談を顧みて、そのためにあなた方が費やして下さった時間、忍耐、労力に大いに感謝しています。
我々は、この会議は北朝鮮から申し入れられたものであると伝え聞いておりますが、そのことはことの重要性(あるいは前の文で書かれている労力を北朝鮮が割いてくれることへの感謝)になんの影響も与えません。

この会談は我々にとっても大事な話なので、労力をかけてくださったことに感謝の念を覚えない理由にはなりません、と書いているわけです。裏の意味としては、これだけ労力をかけてきたものをぽしゃらせたのはお前らのせいなんだからな。そして、自分たちも相応の労力を割いているのを無駄にしてくれたな、という意味ですね。
さらに二文目は、この会談はお前らが頼み込んできたものだと思うんだけど、なんだその態度?というダブルミーニングですね。

悲しいことに、ここ最近のあなた方の声明から感じられるとてつもない怒りと明確な敵意を鑑みるに、この長らく切望されてきた会談を、現時点で開催することは適切ではないと判断しました。
そこで、この書簡をもって、我々双方にとってはその方が良いでしょうし、そしてそれは世界にとっては不幸なことかもしれませんが、シンガポールでの会談が執り行われないことを宣言させて下さい。

1文目。個人的にはここが肝ですかねぇ。表面的には、あなた方が大変な怒りと敵意を覚えているように見えるので、止めた方が良いと判断した、ですが、当然米国として言えば悪いのはお前らの態度であり敵意を向けてきたからだからな、と。結局先週辺りからの北朝鮮の態度翻しての挑発が、最後通牒に至ったと明言したわけです。
2文目、訳が変になるのですけど、会議を中止することは双方にとって益である、と書いているところを双方のために、とさらっと訳したくなかったのです。世界にとっては不幸かもしれませんが、我々にとっては現時点で会談しない方が良いだろうと言っているのです。あなたのためでもあるのですよ?という。まあ、我々の身勝手で会談を止めた訳ではないという言い訳ですね。

あなた方はあなた方の核(攻撃)能力について良く語られますが、我々が持つこれらの能力はあまりに大量破壊的で強力であるため、これらが決して使用されることがないことを神に祈っております。

表面的には、米国と北朝鮮の双方が保有している核という力はあまりに大量破壊的で強力なので、核戦争になって使われるようなことがないことを祈っています、という意味に取れるように書かれています。もちろん、実際の能力は対等では無いことは明白なので、米国の核は偉大だから、という裏の意味になるのですが、表面的にはそこまで傲慢に書いているわけではない、という点を指摘しておきたかったです。もちろん、脅しているのですが、表面的には丁重で対等的に書かれているのがより一層たちが悪いという。

私はあなたとの間で素晴らしい合意が形成されつつあったと感じていましたし、究極的にはその合意だけが意味を持つものだと思います。
いつの日かあなたとお会いできる日をとても楽しみにしています。
しかしながら、今のところは、あなた方が解放して下さったことで家族の元に帰れた人質について感謝させて下さい。
これはとても美しい行為で有り、大変感謝されております。

dialogeを対話としても良いのですが、後半を鑑みると、合意まで至って初めて意味があると捉えられるので合意としました。これは、過程は問題ではない。今回のように喧嘩別れしても、最終的に合意に至ることが大事なんだ、と表面的に書きながら、裏の意味では、結局合意に居たらない瀬戸際外交に意味なんて無いし、これで時間を稼げたなどと思うなよ、という恫喝でしょうね。
その次は、どういう形で引きずり出されてかは分かりませんけど…という挑発でしょうねぇ。
で、その次の人質の解放してくれてありがとう、から、それは美しい行為、の部分。行為と書いているのは原文ではgestureで、中身を伴わない仕草、そぶり、身振り手振り、みたいな意味を持つんですよねぇ。お前らの意味の無い見せかけの歩み寄りの中で唯一価値があった部分だ、という風に煽っているんじゃないかなぁと。そして、外交の駆け引きで利益を得たのはお前らだけじゃないし、やられてばっかりじゃないからな、ということを、北朝鮮に対してもあるいは国内外全てに対して宣言したかったんじゃないかなぁと。

もし、この最も重要な会談に関して何か気が変わったとしたならば、私に電話または書簡を届けることをためらわないでください。
世界、その中でも北朝鮮は持続的な平和と、繁栄、富をえる大きな機会を失いました。
この失われた機会は正に歴史に残る不幸な出来事でしょう。

態度を鑑みて中止を決定したのはこっちだけど、何か気が変わったら連絡していいよ、ということで。謝るなら早くしろよ、ということですかね。そして、最後に、これは歴史に残る事象だから。つまり、これから、何か歴史に残る出来事の発端になるという宣言でしょうね。


今回のは単なる延期で中止ではないから、みたいに言う方がいらっしゃいますが、これを読んで良くそんな風に考えられるなぁ、と思いますね。