ニュースかどうか微妙だが

マイクロソフトがカタカナ用語の長音表記ルールを変更へ

なかなか、面白い話題が/.に挙がっていたのでちょっとリンクを。

http://slashdot.jp/article.pl?sid=08/07/25/1027225

まず、仕事上通信系の研究者という肩書きを頂いており、コンピュータ系技術者側に入る私としては、多くの場合に語尾を伸ばさない表記や発音をしていることをあらかじめ断っておきます。この日記においてもそういう表記の方が多いと思われます(普段気にしてませんし、記述するに当たっても確認はしていませんが)。ですので、どちらかというと、元記事で言えば反対派に入るスタンスの人間です。まあ、その上で元記事で言えば「ふーん、そう、好きにすれば?MSが言ったくらいではうちの業界には多分関係ないよ」くらいですが。

加えて言いますと、その業界における記載のルールや慣例があるならその業界に属する限りはルールに従えば良い、制約から離れているなら好きな記述方法を選べば良い、ただ、明確なルールが無い場所において自分の好みを他者に押しつける行為は最終的には宗教論争にしかならない部分であり、ひいては文系だから理系だからとかそういうののしり合いにしかならないので不毛、だから止めて欲しいと思っております。ですので、変更に対する賛否に関してはこの際どうでも良いと思っています。少なくとも私は反対ですと表明したいために日記に書いたわけではありません(実際のところはスタンスは前述の通りで「ああ、私は伸ばさない人だねぇ」ということは、今回の話をする前提として一応明記して置いた方が良いかなと思っただけです)。一部、ソフトのマニュアルなどで、Windows上とのブレが生じることによる、マニュアル類の訂正や補足が必要となることに対する悲鳴は…まあ、また別の話というか、ご愁傷様です、としか言えませんが。

その上で、何故、日記に書いておこうと思ったかですが、結論から言うと、日本語って良い言語だよねぇ、ということです。

ダーリンは外国人

話が少し逸れますが、現在、中央線沿線住民である私は(電車通勤はしていないので不定期ではありますが)、それなりに中央線を利用することが多いです(というか、出掛けるならほぼ確実に使うわけですが)。そんな折りに電車に乗る楽しみの一つが、電車内の中吊り広告と扉の上に設置されているモニタ*1にて流れている宣伝類を見ることです。中でもお気に入りはモニタにて流れている、「ダーリンは外国人」というメディアワークス刊行の漫画に関するアニメ(?)です*2

一言で言うと、著者である小栗さんとその旦那さんであるトニーさんとの間のエピソードを綴ったような内容ですね。そのトニーさんが英語を母国語とし、言語関係のお仕事をされており、また、日本語以外にも多様な言語に通じている方であるということもあって、日本の文化や日本語に関する話題が豊富ですね。なかなか共感を覚えたり頷かされたりすることも多く、毎週末出掛ける際には楽しみにしております*3

そんな中、少し前に流れていたのが、英語の発音や日本語のカタカナ表記に関するエピソード。もちろん、そのカタカナ表記が元の言葉の発音にそれほど忠実でないのが問題という部分もありましたが、それよりも「ストライク」と「ストライキ」に関するお話が印象的でした。英語ではどちらもstrikeであるにも関わらず、日本語では明確な使い分けが成されていると。ちなみに、作中ではトニーさんは日本語の表記の問題点の例として挙げられていましたが、私はそうは思いません。それこそが、日本語の良さだよね、と思っています。

そもそもstrikeと言う言葉は、何か打つとかひっぱたく、叩きつけるといった意味合いも持つ言葉です*4。しかし、日本語におけるストライクにしろストライキにしろ、その意味で使うことはありません。私は、それは必要がないからだと思っています。野球の用語としてでも、あるいは、労働闘争における用語としてでも、元々日本語になかった概念を取り入れるために、カタカナ表記の言葉を導入したのが理由であろうことは容易に想像が付きます。

同様に元の言語(と言っても私は大学で第2外国語の1年分のドイツ語の単位を取得するのに3年かかったくらい、英語以外はからっきしですので英語以外の例は分かりませんが)では、複数の意味が存在するにも関わらず、日本語でカタカナ表記の外来語として使用する場合には、その一側面しか使わない言葉は多いです。あるいは、一側面ならまだしも、本来その言葉はそれを示さないものをそう呼んでいる場合*5などもあります。私も日本に帰国直後は特に奇妙に感じたものでした。

しかし、それはおかしい、直すべきだというのはナンセンスなのですよ。なぜなら、外来語とは言え、いずれもそれまでの日本語を補完するために新たに導入された新しい日本語なのですから。元の言語の意味や発音に即していないことを問題視するのは、それらをそのまま外国語を喋るときに使おうとするから、というだけのことです。そう言う意味も含めて、外来語は日本語であって外国語じゃない、ときちんと理解して別物であるとして使えば問題ないと思っています。そして、カタカナという表記法によって新要素を柔軟に受け付けようとする、言語として文化としての柔軟さを用意していることに対して*6、日本語って素晴らしいと思うのです*7

まとまってないけどまとめ?

さて、ここから最初の話題に戻りますと

  • 表記や発音において語尾を伸ばすか伸ばさないかを元の言語の発音を元にするのはナンセンス
  • 業界や内容における表記の違いがあるなら使い分けに繋がるのだし大いに推奨されるべきことじゃね?

と思う訳なのですよ。ですので、リンク先でも挙がっていた例ですが、日本のコンピュータ業界では今まで慣例上伸ばさないことが多く、また、コンピュータ業界においてドライバと言う場合に運転手やゴルフクラブの種類を指すことが少ない、だからその業界ではドライバがデバイスドライバを始めとするコンピュータ用語、ドライバーをそれ以外として使う、という例は私には自然な発展だと感じるのです。

だからこそ、自分は、あるいは自分の属する業界はこう使うという主張は大いに結構だと思うのですが、いずれが正しい間違っているということはなく、どちらも実際に使われている表現であり、もう一方の表現が理解できないわけでもないのですから、日本語において一方に統一すべきだというのはナンセンス*8だと思うのですよ。

まあ、そんなわけでまとめ。

  • 日本語ってホント素晴らしいもんですよね
  • ダーリンは外国人、面白いよ
  • 大岡越前の最初の「お」をちゃんと発音している人はいない(2.2音くらい)には笑った
  • すする自由もあればすすらない自由もあるはずだ!(目黒区在住トニーさんの主張でした)*9

*1:ここは伸ばすべきか?伸ばさないべきか?意識してしまうと凄く気になりました、多分普段なら伸ばした気がしますが、私は伸ばさない!と先に主張したので伸ばさないで書いてみました、他意は思いっきりあるので悪しからず

*2:元の漫画を読んだことはないので、あくまで私は車内で流れた内容で、自分が見たことが有るものしか知らないのはご容赦いただきたいです

*3:そして、いつかは日記で話題にしようと思いつつも、説明がやや面倒くさいので先延ばしにしておりました。今回は思い切って書けてちょっと嬉しかったり

*4:今は知りませんがサムスピアメリカ忍者ガルフォードが使うモズ落としは正確には「strike heads(ストライクヘッズ)」という名称でした。相手の頭を地面に叩きつけると言う意味でしょう

*5:ネジを回すドライバー。skrewdriverであってdriverだけではどうやってもその意味にはなりません

*6:外来語を受け入れる言語は何も日本語限定というわけではないですが、基本は表意文字を中心に使っているのに外来語の音だけを取り入れたと明確に分かる記法が存在すること自体が優れていると思うのです

*7:言語としての特異性とそれによる外国語学習の困難さは有ると思いますが…まあ、私は元からそれなりに英語喋れるし苦労したこと無いので知らんよ

*8:無意味、馬鹿げた考え、のつもりで使ってます

*9:うろ覚えなので間違っていたらごめんなさい