原発事故の何が問題なのか

一昨日の日記、コメント頂きありがとうございました。そちらや検索でヒットしているキーワードを拝見していて、書いてみようかと思ったのが、タイトルのテーマです。
元々、昨日書きかけていたのですが、人様の不安をムダに煽ったりしたくなかったため、公開するかどうか悩んでおりました。ただ、本日の福島第一原発2号機での問題とかもありましたし、依然として収束の目処が立たないため、一応、書いておくかと思いまして。


あまり、難しい話は私自身書けませんので、割といい加減かつ例え話みたいになるかも知れませんが、少しでもどなたかの理解が深まり、その上で興味なり、ご自身の意見なりを持って貰えれば…とか堅苦しいことを書いてみたり。あと、携帯から適当に書いてますので、ツッコミとか有りましたらよろしくお願い致します*1


原発事故で怖いのは、放射性物質による汚染です。なぜならば、防御の手段が殆ど無いからです。目に見えないし、臭いもしない(まあ、物質にもよりますが)、なのにダメージを受け、しかもそのダメージもすぐには目に見えない。そういうものだからです。
さらに

  • 見えないのでどこが汚染されているか簡単には分からない
  • 汚染を浄化するには時間を置くしかないが、その時間が人間の時間と比較して遥かに長い
  • なので重度に汚染された土地は放棄するしかない

などと非常に厄介な性質を有します。これが体内に入り込むと、取り除くことが困難となり、放射線によるダメージを受け続けることになるのです。この内部被曝という状態が、人体にとって一番危険なのです。特に、放射性物質の中でも核燃料のように、多くの放射線を放つ物質を体内に取り込むことは危険です。
ちなみに、体内に取り込む一番多くある経緯は当然、口や鼻から吸い込む、飲み込むことによる摂取です。そういったことを防ぐために、

  • 外出時のマスクの着用
  • 手洗い・うがい
  • 服から埃を払う
  • シャワーで身体から洗い流す
  • 拾い食いはしない

などの対応が言われているわけです。


かなり、おおざっぱな説明であることを断った上で。放射線放射性物質について少し説明しておきましょう。
まず、放射線は光です*2。ただし、あまりに強くて物を通り抜ける光なんです。通り抜けるので人の目には見えません。
強い光というと、例えば太陽を直視してはいけない、とかゆー話を思い浮かべるかもしれませんが、ちょっと違います。とゆーのは、放射線の強いというのは光の粒子一つずつが、とても高いエネルギーを持っているということだからです。それに対して、太陽光の強い光というのは光の粒子の量が多いということです。
あくまで例えですが、光の粒がビー玉かパチンコ玉か、そういう玉だとすると、放射線の強いは、それが時速1000kmで飛んでくるようなもので、太陽光の強いは、時速は100kmだが無数に飛んで来るようなものです*3
太陽光を見ると目がやられるのは、無数の光を目が受け止めると一つ一つは大したことなくても、全部で見ると大きな熱なりになるからです。レンズや鏡で光を集めると熱くなり、下手すりゃ燃えるのも同じです。
一方、放射線は一つ一つがとても早いようなものなので、量は少なくても、一つずつ威力が高いのです。そして、威力が高いと、物を通り抜ける力がとても高いのです。ゆっくりと飛んでくる玉なら紙とか、板とか、ガラスに当たっても通り抜けませんが、早くなると紙は破れ、板やガラスは割れるでしょう。
光の粒は実際にはとても小さいですので放射線が物を通り抜けても、穴は見えません。むしろ何にも当たらずに通り抜けることの方が多いです。ただ当たると、威力は大きいので目に見えないような傷が出来るのです。
この傷ですが、どんなものでもそうですが、少しの間は大丈夫です。ところが、多くなると、だんだん不具合が出てくるわけです。人体の場合ですと、細胞や遺伝子が傷付くことによる様々な病気に繋がります。例えばガンとか白血病とかの原因になります。さらに酷いと、もっと急性で体調不良に繋がりますし、失明とか、火傷とかで死亡することもあります。
さらに放射線は物を通り抜ける力が強いので、防ぐことが困難です。防護服などで軽減はできても、程度が酷いと被曝します。だからこそ、今回の福島第一原発での作業でも、放射線の量が増えて中断したとか、人員が入れ替わり作業するとか言ってるのです。


さて、放射線の次は放射性物質の説明です。放射線は光だと言いましたが、光はそのままその場で留まるものでは無いですよね。つまり、放射線が出るには原因があって、その原因が放射性物質なわけです。
放射性物質は時間と共に、放射線を発し続けます。つまり、放射性物質は何もしなくとも常時放射線という光を放っている物質ということです。しかし、例えば電球が光るには電気が必要ですし、蝋燭は蝋が燃えることで光るわけです。では、放射性物質は何を消費して光っているのかというと、その物質の状態が変わることで放射光を放つのです。つまり、その元素自体が別のモノに変わる、原子レベルで違う物質に変わることで、エネルギーを発生するのです。そして、この原子の状態が変わることによって発生するエネルギーを用いる発電方法が、原子力発電なわけです*4
世の中にある物質の多くは、ある程度不安定で、時間を置くことで、このような変質を起こすことが知られていますが*5、特に放射性物質と呼ばれるものは、原子が不安定な状態にあるもので、放っておくことで自然に、それもそこそこの頻度で原子の崩壊、核分裂などを起こすのです。その中でも、原子力発電に用いられる核燃料は、この核分裂が起こりやすい不安定な物質を抽出して、さらに核分裂が連鎖的に起こりやすいような状態にすることで、効率よくエネルギーを取り出そうというモノなのです。そのため、特に核燃料と呼ばれる補丼お放射性物質は非常に多くの放射線を放ちます。
なお、細かく言うと放射性物質には色々な種類があり、その違いによってどのような放射線が出るかも異なりますので、詳しいことは割愛します(とゆーか、私自身がそんなに詳しいこと書けませんし)。ただ、一概に放射性物質と言っても、程度に違いがあり、放射化した水などのように、良くはないが、そこまで汚染の程度が酷くないものから、原子力発電に用いられる核燃料のように、非常に程度が危険なモノまで色々とあるということは知っておいて下さい。この程度を把握しないで、放射性物質は全て悪だというような、放射能アレルギーみたいなものことを言うのはお勧め致しません*6
例えば、日常生活においても、微量の放射線を浴びることは、いくらでも有るのです。また、例えば遺伝子に傷を負ったとしても、程度が軽ければ、人体は有る程度、淘汰・治癒します。そもそも、生物は長く生きていくうちに不良が発生する可能性が高くなることへの対策として寿命があり、世代を交代していくようにできているわけですから、その一生を著しく縮めたり、その過程で苦しみをもたらすようなことが無ければ、それは、無視できる程度のことと言えると思います。結局、程度問題だと思うわけです。


さてさて、放射線放射性物質の説明を軽くしたわけですが、言いたかったことは、核燃料が漏れることが一番不味いということです。そして、例え微量であっても、一度体内に取り込んでしまった放射性物質は継続的に人体にダメージを与え続けます。例え、すぐに死亡するほどではなくとも、ガンや白血病と言った難病に発症する確率が高くなるのです。また、多少放射線が強い場所に1時間居たとしても、その際に受けるダメージは1時間分でしかありませんが、取り込んでしまうと、そのダメージは、無視できるほどに反応が進むか、はたまた一生か、受け続けることになるわけだからです。
そして、核燃料が漏れるケースというのは、例えば原子炉が爆発した結果、色んなところに降り注ぐ最悪のケースですとか、燃料棒が溶融して、細かな塵となって大気を漂うですとかが考えられるわけです。


個人的見解ではありますが、原子力発電は、エネルギーを取り出す手段として無くてはならないモノになっていると思います。ですので、個々の危険性を考慮することなく、それを、ただただ盲目的に批判するのは、無知なために都合良く扇動されている者か、そうで無ければ現実を見ない理想主義者でしかないと思いますし、後者ならば現実的な代替案を示して欲しいと思います。私自身は核融合にその可能性の一端を見いだしたいと思い、その方面に進んだこともありましたが、残念ながらそれが(少なくとも今は)夢でしかないと悟り、今はその道を諦めております。
一方で、本当に防がなくてはならないことが何なのかということは、意識しておく必要が有ると思います*7。ただ、細部に捕らわれて、不要な抗議などにより、図らずも自体を悪化させるような事態を起こしたりしない事も含まれると思います。その一方で、必ずしも信用できない大本営発表の例もありますし、正しく自衛するためにも、知識が有ることはムダにはならないはずです。
そういったことを踏まえて、人の言うことを鵜呑みにするのではなく、様々な側面から総合的に判断して頂きたいと思うのです。

*1:昨日の衝突断面積の話も、さらに勘違いに気付いた…修正はしてませんが…

*2:正確には、放射線には色々とタイプがあり、発生メカニズムの違いによって光以外の放射線もあります。そういう意味では定義がやや曖昧ですが、ここではガンマ線X線に類するような光を放射線として説明しておきます

*3:あくまで例えですよ?波長とゆーか周波数とゆーかは専門性の違いでしょうが

*4:この変質の過程で原子の質量が減損し、それがエネルギーとなるわけです。所謂E=mc^2という奴です

*5:半減期などと呼ばれ、その物質の半数が変質するまでの時間を指します。安定な物質ほど長いですが、物質に含まれる中性子の数の異なる同位体によって大きく異なることも珍しく有りません

*6:余談ですが、あえて、ここで放射能アレルギーと書きました。これは、世の中一般に言われる放射能というモノは、正しくは放射性物質を意味しているように見受けられるからです。ちなみに、先日の枝野官房長官の会見でさえ、一度は放射能物質と言われてましたし…。ただ、放射能というのは、放射線を放つ性質を意味するだけのものであり、放射能がある物質が放射性物質なのです。個人的には、放射能という言葉を好んで使う方の多くは、こういう理解を正しくされていないことが多いように思いますのであえて「放射能アレルギー」と言っているのです

*7:その例で言いますと、本日発表されております福島第一原発2号機の目を離した隙のポンプの燃料切れなどは、とてもではないが許されない罪だと思うのです。もちろん、極限の状況で作業されているのだということはあるのでしょうが…。作業が長引くことで緊張感が途切れて大惨事に陥ることを一番恐れていましたが…ひょっとすると、それに近い状態だったのかも知れません